収益認識基準は、企業が収益をいつ、どのように計上するか定めた会計ルールです。
これまでは企業ごとに収益計上のタイングが違い、企業間での比較が難しくなることがありました。
この問題を解決するために、収益認識基準が導入されました。
収益を計上するタイミングや方法が明確になるため、より一貫性のある収益認識を実現できるようになります。
投資家や関係者は財務状況を把握しやすく、企業の信頼性も高まるものとなります。
収益認識基準の5つのステップ
- 契約の識別
- 履行義務の識別
- 取引価格の算定
- 取引価格の配分
- 履行義務の充足による収益の認識
上記、5つのステップを経て、収益の認識とします。
具体例を用いて簡単に5つのステップについて解説していきます。
具体例:テレビを販売した場合
契約の識別:
顧客がA社でテレビを買う契約をする
契約内容(テレビ本体:95,000円, 設置代:5000円, 納品日:〇月〇日)
履行義務の識別:
A社が顧客へテレビを納品するという義務が発生
取引価格の算定:
今回の取引は10万円
取引価格の配分:
テレビ本体 95,000円
設置代 5,000円
履行義務の充足による収益の認識:
A社が顧客へ〇月〇日にテレビを納品した
このようなイメージです。
契約識別時に取引価格の算定はやっていることが多いですが、後々変更などを考えて認識基準ではステップが分かれています。
収益の認識時点
収益を計上するタイミングは出荷、着荷、検収など状況によって異なる場合があります。
ここで重要なのはリスクと報酬の移転がどのタイミングで発生するかということです。
リスクと報酬とは破損や不具合、商品の所有権が顧客に移転するタイミングです。
例えば、出荷時に破損などの責任や、商品の所有権が顧客に移ることが明記されているのであれば、出荷時に収益を計上することができます。
具体的な仕訳例と割り戻し
収益の認識基準を満たす場合、上記例を用いると
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金 | 100,000 | 売上高 | 100,000 |
このような仕訳になります。
ただ割引適用などで、後日返金が必要になるケースがあります。
例えばキャッシュバックキャンペーンで後日10%返金されるといったケースです。その場合は
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金 | 100,000 | 売上高 | 90,000 |
返金債負債 | 10,000 |
このように後日返金が決まっている、もしくは予想される場合
返金負債として計上し、キャンペーン実施時には返金負債と現金で仕訳します。これを売上割戻(リベート)という
返金の必要性がなくなったと判断された場合、返金負債と売上で計上します。
ちなみに仕入時には割引がある場合、特に特別な会計処理はありません。
割引された金額を受け取った場合、現金と仕入などで振替を行います。
サービスの提供について
これまでは商品の売買について説明してきました。
しかし、収益には商品以外にもサービスの提供により得る場合があります。
例えば保証
無料保証の場合、特別な処理はありません。
しかし、有料保証の場合は収益を認識する必要性が出てきます。
具体例を用いて説明します。
有料保証:
金額:3万円
期間:3年間
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金 | 30,000 | 契約負債 | 30,000 |
収益の認識は履行義務を充足した時点です。
契約時点では義務を果たせていないので契約負債もしくは前受金で計上します。
この場合36か月間均等にサービスを提供することになるので、月の利用料は約833円
つまり1か月に833円分のサービスを提供したことになりますので、月単位で計上することが可能です。
割り切れない端数や日割り計算が必要な場合は最初の月か最後に調整するのが一般的です。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
契約負債 | 833 | 役務収益 | 833 |
コンサルや教育、保証サービスなどサービスの提供から生じる収益は役務収益といいます。
※役務とはサービスの意味
サービス提供にかかった費用は役務費用です。
役務費用と役務原価
役務費用とはサービスを提供するためにかかった費用全般を指します。
直接費用:サービスを提供するための人件費、外注費、消耗品など
間接費用:管理部門の人件費や事務所の光熱費など
これらを総称したものです。
そのうち、直接費用のことを役務原価とも言います。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
役務原価 | 20,000 | 現金 | 20,000 |
また、サービス提供前に必要になった経費は仕掛品として計上することもできます
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
仕掛品 | 20,000 | 現金 | 20,000 |
サービス提供時には、役務原価と仕掛品で振替を行います。
費用についても場合によっては収益同様、月割り計上を行います。
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