近年、がん治療に対するアルテミシニンの可能性が注目されています。
今回はアルテミシニンがどのようなものなのか、がん細胞を攻撃する仕組みや、よもぎに期待できる健康効果を解説します。
アルテミシニンとは
アルテミシニンは漢方薬として利用されていたヨモギ属の植物であるクソニンジンから生成されるセスキテルペンラクトンです。
抗マラリア活性を有し、多薬剤耐性をもつ熱帯熱マラリアにも効果的です。
(※マラリアとはマラリア原虫という寄生虫による感染症)
セスキテルペンラクトンとは一部の植物に含まれる物質で、抗炎症作用や抗がん作用があると考えられています。
クソニンジンは国内、アジア、ヨーロッパと広く分布しており、独特の悪臭をもつよもぎの一種です。
アルテミシニン含有量(種類別)
クソニンジン以外のよもぎにアルテミシニンは含まれているのか調べてみました。
2015年ワシントン大学により「よもぎ成分が癌細胞を死滅」として研究論文を発表しました。
当時、研究で使用したヨモギはクソニンジンであり、アルテミシニン含有量は他のよもぎに比べ豊富に含まれていることがわかります。
日本の一般的なよもぎはカズサキヨモギを指しています。
アルテミシニン平均含有率が0.05%にあたるので100gあたり、0.05g含まれています。
ワシントン大学のライ教授は、アルテミシニンの薬効は非常に強く、0.1g(100mg)以上あるものを摂取すれば薬効が期待できると述べています。
カズサキヨモギで換算すると200g必要となりますが、癌を発症している人に対しての期待できる量なので、予防であればこれほどの量を摂取する必要はないようです。
0.1g摂取する場合は、サプリが簡易的で良さそうですね。
ちなみにアルテミシニンは葉や茎にはほとんど含まれておらず、花に一番多いとされています。
なぜアルテミシニンは癌に効くのか
癌細胞はフリーラジカル(活性酸素)に弱い特性があります。
癌細胞は分裂(増殖)するときに、DNAを複製するため多くの鉄を必要とします。なので、正常な細胞に比べ、癌細胞は高い鉄濃度をもっています。
そして、アルテミシニンは鉄と反応し、フリーラジカルを生成します。
つまり、アルテミシニンは鉄分を多く含む癌細胞に侵入し、鉄と反応してフリーラジカルを生成し、正常細胞を傷つけることなく、癌細胞を攻撃できるようになるのです
日本のよもぎの健康効果
カズサキヨモギに含まれるアルテミシニンは含有率が低く、癌治療に対する薬効の期待値は低いといえます。
ですが、よもぎはハーブの女王と呼ばれ健康、美容、妊活などにも活躍し、欧米でも話題になっています。
よもぎとは
キク科ヨモギ属の植物で、世界各国で生息しています。
独特な香りがあり、葉は食用、生葉は止血、よもぎ茶にして飲むと薬効があるとされています。
ヨモギ属の属名はArtemisia。ギリシャ神話のアルテミスに由来し、月経痛、生理不順、不妊に効果があるとされ、婦人科薬として使用されていました。
よもぎの種類
日本では約30種類ものよもぎが確認されています。
世界でいうと約250種類と数多く、古くから世界中で利用されてきました。
国内のヨモギは「カズザキヨモギ」、「ニシヨモギ」、「オオヨモギ」の3種が一般的なよもぎで、地域や環境で変わります。
【カズザキヨモギ】
分布:本州~九州、小笠原、朝鮮
草餅やハーブティーなどに使われている
【ニシヨモギ】
分布:関東地方以西、九州、沖縄
沖縄ではフーチバーと呼ばれ、沖縄そば、山羊汁、炊き込みご飯や雑炊にも使われている
【オオヨモギ】
分布:北海道~近畿地方以北
お灸のもぐさの原料、若苗は天ぷらやおひたしなどの食用
よもぎに含まれる主要成分
食物繊維、ビタミン(A、B1、B2、C)、カリウム、マグネシウム、β-カロテン、カリウム、マグネシウム、リン、鉄、葉酸、クロロフィル、精油(シオネール、アルファツヨシ、セキステルペン)
よもぎに期待できる健康効果
- 浄血、造血、止血作用
よもぎには止血のビタミンと知られるビタミンKが豊富に含まれています。
ビタミンKは造血を助け貧血予防につながります。また血液をサラサラにし、きれいに保ってくれる効果があります。 - 癌予防、デトックス効果
よもぎの主な成分であるクロロフィルは染色体異常を抑制する働きがあり、癌細胞の増殖を防ぎます。また胃腸に付着した老廃物を吸着し体外へ排出するためデトックス効果もあります。さらにクロロフィルには血中コレステロール値を下げる働きがあるので循環器系の病気予防につながります。 - 冷え性改善、血流促進
よもぎ独特の香りのもとである精油成分が体を温めます。血流促進、発汗作用があるので美容効果も期待できます。また精油に含まれるβ-カリオフィレンには女性ホルモンを整え、月経前症候群や更年期障害の症状を緩和します。 - 老化防止
よもぎの苦み成分であるタンニンは老化物質である過酸化脂質を抑制します。過酸化脂質が増えると癌や動脈硬化を引き起こす要因となります。
よもぎの注意点
アレルギーの方や幼児、てんかん体質の方は摂取を控えてください。
またよもぎには「ツヨシ」という成分があり、子宮を収縮する作用をもつため、過剰摂取は流産、早産につながります。
またデトックス効果が高いので、過剰摂取は下痢や腹痛などを引き起こす可能性があります。
よもぎは健康に良い
日本で一般流通しているよもぎには癌細胞を死滅させるほどの効果は期待できないものの、予防やさまざまな健康効果をもつスーパーフードだということがわかりました。
アルテミシンの効果を発揮するにはサプリが摂取しやすいと思います。
しかしながら、がん患者がサプリメントを服用する場合、むしろ有害になり得るものもあるという話もありますので、治療中の場合は担当医に相談しておいた方が良いと思います。
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