有価証券の決算時の仕訳は保有目的によって異なります
売買目的有価証券
売買目的有価証券は決算で時価評価をします
値上がりの場合
売買目的有価証券残高 < 決算時の時価評価価格
借方 | 貸方 | ||
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売買目的有価証券 | 100 | 有価証券評価益 | 100 |
時価評価はいま取引できる金額です。
仮に時価評価の金額が売買目的有価証券の残高より100円高い場合、収益に有価証券評価益として
その差額を仕訳します。
値下がりしている場合
売買目的有価証券残高 > 決算時の時価評価価格
借方 | 貸方 | ||
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有価証券評価損 | 100 | 売買目的有価証券 | 100 |
値下がりしている場合は、有価証券評価損として費用を計上します。
満期保有目的債券
満期まで保有するので、時価評価はしません。
しかし、償却原価法により償却額を計上していかなければなりません。
償却原価法とは、取得原価(帳簿価格)から額面金額となるように、一定の手法で金利調整分を加算していく方法です。つまり、取得原価 < 返還される金額という場合に、差額分を均等割りで毎年、正しい金額にしていきましょうということです。
例;額面10,000円の債権を9,700円で購入した。償還期間は3年の場合
1年保有:9,800円
2年保有;9,900円
3年保有:10,000円→現金化
一定の手法には定額法・定率法・生産高比例法などがありますが、満期保有目的の場合、定額法が主流です。
定額法はシンプルで 額面金額 – 取得原価 ÷ 年数 で求まります。
10,000円の社債を9,700円で買った。償還期間は3年
借方 | 貸方 | ||
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満期保有目的債券 | 100 | 有価証券利息 | 100 |
有価証券利息は3年で300円なので1年保有していた場合、決算では1年分(100円)を償却します。
これは取得当時9,700円の価値だったものが2年目にはでは9,800円の価値になっていると同義だということです。
3年目の返還されるときには帳簿金額も額面の10,000円になっており、返還されたら、満期保有目的債券を現金か預金かで振替するという流れになります。
子会社株式・関連会社株式
こちらも基本的には売却せずに長期保有する目的なので時価評価はしません。
よって、決算時の仕訳もありません。
その他有価証券
こちらは長期保有ではありますが、売却予定の有価証券なので、時価評価します。
値上がりの場合
10,000円で購入した有価証券。期末時価は11,000円だった
借方 | 貸方 | ||
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その他有価証券 | 1,000 | その他有価証券評価差額金 | 1,000 |
その他有価証券評価差額金は純資産です。
なぜ純資産を直接増やすのかについて
売買目的のような短期的取引はいつでも売買できるので、値上がりした分儲かったと同義であるとしていました。
そのため、有価証券評価益という収益を計上していました。
それに対し、その他有価証券は長期的な保有をすることを前提としています。
つまり決算時に時価は上がっていても取引はしないので収益とせず、(損益計算書には反映させず)
純資産だけを増やしています。
その他有価証券評価差額金とすることで、一時的に純資産が増えていることが確認できるのです。
値下がりの場合
10,000円で購入した有価証券。期末時価は9,000円だった
借方 | 貸方 | ||
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その他有価証券評価差額金 | 1,000 | その他有価証券 | 1,000 |
この場合はその他有価証券評価差額金(純資産)はマイナスになるので借方に。
その他有価証券(資産)もマイナスなので貸方にという仕訳になります。
翌期の処理について
決算整理をしたのち、翌期ではどのように処理をすればいいのか簡単に解説します。
やり方は2通りあります。
洗替方式
こちらは取得原価に戻す方式です。
決算で仕訳した評価益分をマイナスで戻し、売却時には取得原価と売却益の差額分を処理する方法です。
翌期首→評価益をマイナスで戻し、有価証券残高を取得原価に戻す
売却時→取得原価を基準に売却時の時価金額との差額を売却益とする
その他有価証券は洗替方式で必ず処理します。
※前期に収益を上げていない為
切放方式
こちらはそのまま処理をせず決算で仕訳した評価益を含む有価証券を基準とし、売却時にその差額分を処理する方法です。
翌期首→処理無し
売却時→有価証券残高を基準に時価金額との差額を売却益とする
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